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2014年東京都知事選の結果について

(※ スマホでご覧の方は、すみませんが、PCモードにてご覧ください。スマホモードですと途中以降が閲覧できないようです。)

2014年東京都知事選は、元首相である細川護熙さんが立候補し、筆者もいち早く本ブログにて支持表明をしました。

以来、一都民として筆者も尽力する日々になりました。今まで私の言論をご覧くださった方々や、共感くださった方々に、心から御礼を申し上げます。

選挙戦は街頭では大変白熱したものになりました。特定の支持基盤をもたない細川さんは、小泉元首相や、佳代子夫人、応援される文化人の方々らと街頭にでて、脱原発から広がる新しい社会像を訴えました。

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東京選挙区には魔物が棲みます。つまり予想できない有権者の判断が起こる事があり、歴史的に政治権力者たちが東京選挙区では翻弄されてきました。良識あるリベラルな有権者が多いのも東京選挙区の特色でした。

しかし、先日選挙結果の試算を筆者が行ったところ、投票率が低くなる場合は、細川氏は敗北してしまう確認をしました。方々で脱原発を訴える陣営の一本化を望む主張はありましたし、筆者もかつて本ブログで一本化について論じました

ですが、一本化はなされませんでした。もちろん告示後は一本化はできません。対象となった両陣営の考え方の違いもあったようです。

そして、恐らく細川さん・小泉さんの念頭にあったのではと拝察しますのは、脱原発という主張は都民の圧倒的多数の支持がなければできないため、投票率を上げて当選するんだというお考えだったかと思われます。今回の敗因は低投票率であり、選挙戦において一本化を望んだ人々において、「一本化できなかったから負けたんだ」という言い訳はしてはならないと筆者は思います。

一方で、細川さんの選挙戦の課題も冷静に反省せねばならないのではと筆者は思います。

1. 準備不足で選挙戦に突入した。細川さんが出馬会見を行ってから対外発信するまで時間がかかりすぎた。告示日以前の公開討論会への参加を見送ってしまい、公開討論会が不開催となる異例の選挙となった。ですが、筆者はかつて東京財団マニフェスト研究会に参加し、公開討論会の重要性を認識してきました。マニフェスト選挙と公開討論会は車の両輪であり、良いマニフェストを訴えていても、それを公開討論会の場で有権者が比較検討できる事が肝要でした。選挙戦の終盤になって、気迫十分で細川さんはテレビ討論会へ参加されていましたが、有権者に浸透する時間に不足しました。

2. 都民が望むリアリティに政策が応えきれていなかった。細川さんがおっしゃられるとおり、脱原発は社会のパラダイムシフトであり、新しい価値観です。一方、都民は景気や雇用への不安に向き合う日常を送っており、「脱原発の先にどのような経済があるのか」「脱原発に向かう過程ではどのような経済政策があるのか」をもっと語り、都民に浸透するべきだったと思います。経済政策の具体性に不足する脱原発の訴えに、リアリティを感じられない都民も依然多かった結果と思います。一方、社会保障を望む都民からは、元厚労大臣という舛添候補の経歴はリアルに受け止められたと思われます。

3. 陣営の細川さんへのサポート体制が追いついていなかった印象が筆者にはあります。細川さんの街頭演説やテレビ討論会での主張で、政策によっては具体性が追いついていない場面がありました。政策スタッフの方々が選挙戦において懸命の調査や原稿執筆などをされているかと思いますが、例えばオバマ大統領が優秀な演説原稿作成スタッフを抱えているように、候補者のみに政策検討を集中させすぎずに、チームで政策立案能力を高めて行く事が期待されます。

一方、視点が変わりますが、「低投票率の選挙を社会が認めていいのか。民主主義教育を日本は怠りすぎたのではなかろうか」と筆者は危機感を感じます。有権者が社会の主人公である事を、多くの人々は忘れているか、「学校で実感持てるように教わっていない」のではなかろうか。街頭演説や、ツイッター・ツイキャス・Ustream などのウェブ配信が行われても、個々人の判断よりも、組織票に負けてしまいます。個々人の良心を信じる選挙戦には限界があることが今回では示された形になりました。

低投票率で勝利した事は、本当は有権者の広範な支持を得た事にはならないのです。しかし棄権した人は、投票に行きたい関心が持てなかったからであり、自分が有権者として投票するリアリティを感じられなかったからと思われます。棄権した人が多数派という歴史的な投票率の低さは、白紙委任のお任せ政治が今後も続いて行きかねない事を現しています。

投票は、有権者という社会の最高権力者の権力の行使です。歴史的に普通選挙の実現には多くの血が流されて、勝ち取られてきた経緯もあります。ですが、多くの有権者は「政治は信用できない」「自分の投票は大勢に関係なかろう」とリアリティを感じられなくなりました。

特定候補にフォーカスを当てるのは現行の公選法上できないとされています。ですが、選挙戦の情報がほとんど報道されなかったのは、やはり選挙に有権者はリアリティを感じられなくなり、低投票率に行き着きます。現行の公選法自体、有権者の為に存在するよりも選挙管理のために存在しているとの指摘は以前からありました。民主主義の為に情報は活発に有権者が一層知る事ができるよう、現行の公選法の見直しも必要と筆者は思います。

一方で、政治家にとって今回の低投票率は大きな課題を投げかけたと思います。有権者からの政治への不信は大きく、元首相らが命をかけて街頭に立ち続けても、投票率は上がらないのです。(当局には低投票率はやりたい放題ができるので、ありがたいですが)

「携帯電話の iPhone が新しくなる」「サッカーの大事な試合がある」「パチンコ店がリニューアルする」となったら、人々は長時間並んででも行きます。ですが、投票所に大多数の有権者が並ぶ選挙は、近年見られなくなりました。

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商品を買うお客様と、政治を決める有権者は違うのです。ですが、お客様意識が社会に広がりすぎた為に、そしてリアルな民主主義教育も行われずに来た為に、投票率は重大選挙でも上がらない時代に突入しました。

例えばスウェーデン(歴代投票率はおおむね8割以上)では、投票率がもし下がると「民主主義がおかしくなっていないか、との国民的議論がすぐ起こる」と言います。一方、投票率90%台を達成しているオーストラリア(BBC報道)のように、義務投票制 (compulsory voting)の導入も、日本で今後国民的に議論をするべきではと筆者は思います。

政治家が暴走を始めたら、世界史の多くの先例にありましたように、民主主義社会そのものが壊れて行きかねません。誤った判断でイラク戦争を始めたブッシュ前大統領も低投票率(60.1%, 2004)で選ばれた政治家でした。立憲主義(基本的人権の尊重、国民主権、平和主義)の否定すらされる事が日本社会では現実味を帯び始めています。今まで享受できていた権利も制限されるように日本社会が変わってから、一般市民が「こんな事になるとは」と後悔しても、もう時遅しなのです。ただ、社会の変化の兆しは日常生活では見えにくい懸命にいつも社会の潮目の変化を考えていないと、なかなか見えない。

いかに市民のボランタリーな力を引き出し、社会への参加意識を高めていくか。財政危機で行政も議会もできることが減って行く今後において、政治のリアリティを実感できる民主主義教育を、学校そして社会全般で行って行く必要を筆者は感じます。民主主義の啓発団体もより活発に活動を行う事や、気概あるジャーナリストらの報道などを通じ、日常から日本社会の一層の成熟を目指す必要があると筆者は思います。「情報公開は民主主義の基盤」(元三重県知事で早大教授の北川正恭氏)です。

そして一番効いてしまったと筆者が思いますのは、今回はマニフェスト選挙という色彩が乏しい選挙でした。各陣営もマニフェストをしっかり作って選挙戦に臨むよりも、準備期間不足もあり、具体性を欠く政策説明も多かった選挙戦になりました。

マニフェスト選挙に対しては、民主党の失政とリンクされ、有権者からのイメージがかんばしくないかもしれません。しかしイギリスのようにマニフェスト選挙が民主主義のインフラとして機能し続けている国もあります。非連続で革命的に新しい政策を民主的に行うには、国政であれ地方選挙であれ、道具として正しく使われればマニフェストは有効に機能します。

野党陣営が政権与党に抗するには、やはりマニフェストをきちんと作成して選挙に臨まないと、選挙には勝てない事も今回で明らかになったと拝察します。

最後に、今回立候補された候補者について筆者が感じました事を3点述べます。

1. 家入候補がインターネットを用いて選挙戦を展開したのは、新機軸と思います。今後準備期間がもっとあれば、更に上位、ひいては都知事当選の確率も高まるかと思います。かつてマニフェストを市民が作成して、選挙にでる候補者に提示し、採用した候補者を支援するという市民版マニフェスト運動が奈良県奈良市東京都青梅市等で志向されましたが、家入氏の取り組みはインターネット選挙解禁後の新しい姿と思います。

2. 今回の都知事選では極右志向の候補者も立候補しました。開票後、1割の得票結果との報道を受け、今後の保守政党の立党に向けて手応えを感じておられるようです。今までの選挙では極右志向の候補者は、有力候補としてメディアでも位置づけされなかったですが、マイナーからメジャーへの階段を一段上がったと思われます。欧州でも極右政党が一定の存在感を持ちました。今後も注視が必要と筆者は思います。

3. 脱原発への主張は今後も止まる事はない事も確認できた選挙になりました。ついに日本の最高権力者を務めた元首相らが原発への疑念を社会へ問題提起した事はかなり大きなインパクトになっていきます。日本に来る(きたる)巨大地震で地球が死滅する事がないように、更には、10万年後の地球が放射能で悩む事がないように、今後も脱原発運動は継続し、かつ広がって行く事が確認できた選挙戦だったと筆者は拝察します。

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