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これが言いたい:社会が「排除」を克服できるか、今こそ問われる=山崎公士

(以下、引用です。)

これが言いたい:社会が「排除」を克服できるか、今こそ問われる=山崎公士

http://mainichi.jp/select/opinion/iitai/news/20110203ddm004070026000c.html

 ◇障害者権利条約の理念実現を--神奈川大教授・山崎公士
 東京・JR山手線の目白駅で先月、全盲の男性がホームから転落し、電車にはねられ亡くなる痛ましい事故があった。障害者が日常の生活でいかに危険にさらされているかの一端が如実に表れた。早急にホーム柵を設置することで、障害のある人たちの社会参加を阻む要因を取り除く必要がある。

 障害のある人もない人も共に楽しく暮らせる社会を目指す「障害者権利条約」が06年12月に国連で採択された。08年5月に発効したが、日本はまだ批准していない。

 世界でも日本でも、社会の仕組みは「障害のない人」を基準に作られてきた。その中で、障害のある人は、公共交通の利用や公教育への就学、就労、情報メディアの視聴など、さまざまな場面で不利な立場に置かれ、社会的に排除されてきた。

 だからこそ権利条約は、障害者を保護の客体から権利の主体へと転換し、障害者に対する社会的排除と障害の有無による格差の是正を打ち出した。日本の障害者団体はかねて条約の批准と、それを実現する国内法の整備を求めてきた。そして、これに呼応する形で内閣に「障がい者制度改革推進本部」(本部長・内閣総理大臣)、その下に「障がい者制度改革推進会議」が置かれている。

 推進会議の構成員24人中14人が障害当事者やその家族であり、当事者の視点から議論をしている。昨年1月から12月まで29回会合し、これまでふたつの意見を取りまとめた。第1次は障害者基本法の改正や障害者差別禁止法などの制定方針、第2次で基本法改正の目的、内容を示した。

 条約を踏まえた改革が実現するとまず、障害を理由とする差別の禁止が法律で規定される。条約は障害を理由とする「直接差別」だけでなく、表向き中立的に見えても、実は障害者だけに不利益な効果を発生させる「間接差別」も差別とする。視覚障害者に通常の答案用紙しか渡さない場合などがこれにあたる。

 さらに、実質的な平等を確保するための配慮をしない「合理的配慮の欠如」も差別と位置づける。例えば、経営基盤が安定した私企業が、地下でレストランを経営してエレベーターを設置しない場合、車椅子利用者への「合理的配慮」に欠ける差別とみなされる。ただし小規模な企業の場合、その限りではない。

 第二に障害者が施設内でなく地域で生活し、社会に参加する権利が認められる。

 また、手話が一つの言語として認められ、障害のある子どももない子どもも共に学ぶ「インクルーシブ教育」が原則となる。

     *

 しかし、実現は前途多難である。推進会議によるヒアリングでは、現行法でも条約の趣旨は十分に生かせるとして、会議の望む方向とは異なる見解を示す中央官庁も少なくない。

 菅直人首相は通常国会の施政方針演説で今国会に基本法改正を提案し、「総合的な障がい者福祉制度」の導入を検討すると表明した。障害者に情報アクセスとコミュニケーションの手段を保障することや、インクルーシブな教育制度の構築など、私たちの意見が施策に反映されれば、障害を持つ人たちがより、生きやすい社会が実現する。条約も当然、批准されることになろう。

 「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」。これが条約を象徴する標語である。政府がこの意味を真摯(しんし)に受け止め、制度改革を進めることを切に望みたい。

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 「これが言いたい」は毎週木曜日に掲載します

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 ■人物略歴

 ◇やまざき・こうし
 専門は国際人権法・人権政策学。障がい者制度改革推進会議の構成員を務める。

(毎日新聞 2011年2月3日)

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