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「日本の社会起業家、田辺大さんと施治安さんが訪中」

11月上旬の上海訪問について、GLI上海スタッフの方々が、記事を作成くださいました。

中国サイドから見ると、このような受け止め方を下さっているのかと、勉強になります。

重ねて、ありがとうございます。

(以下、GLIサイトより引用します。)

11月4日~11月8日、日本から二人のGLIネットワーカーが上海を訪れた。オフィスマッサージ“手がたり”創始者の田辺大さんとSocial Innovation Osakaの創始者・施治安さんである。訪問期間中、二人はGLIのアレンジにより上海地区のネットワーカーや公益組織と精力的に交流を行った。

田辺さんは中央大学法学部卒業後、自動車メーカーと外資コンサルティング企業で働いた。2003年、日本初の社会企業を対象とするコンサルティング会社(有)フォレストを設立。たまたま、妹が盲ろう者と結婚したことをきっかけに、2006年、身体障がい者の就職市場開拓を目的とし、メンタルヘルスサービスを提供する社会企業を設立し、そのサービスをオフィスマッサージ“手がたり”と名付けた。

手がたり”のウェブサイト:http://www.fpltd.jp/

GLIサイト関連記事:
http://www.glinet.org/inspiredetail.asp?id=2289

施治安さんは在日華僑の第3世代。50歳の時、ビジネスの第一線から退き、関西地区を中心に、環境保護と社会企業関連活動に従事するとともに、日中両国のかけ橋として積極的に活動している。

GLIは彼らのために3日間のスケジュールを練り上げ、彼らに現代中国の大学生の社会企業に対する情熱や活力を感じてもらうと同時に、成長期にある社会企業団体と交流して、互いの経験と心得を分かち合えるよう手配した。

11月5日、田辺さんと施さんは復旦大学にて、CODE(Center of Dream Enterprise)課程の特別ゲストとして講演した。その後の質疑応答では復旦大学の学生と交流し、学生の起業プロジェクトに対する意見を述べ、経験を分かち合った。講演にはGLIから事務局長の李凡はじめ上海事務所スタッフが同行した。

45分間の英語による講演の中で、田辺さんは、主に学生達に3つの内容を話した。

a)、社会起業家入門:一般人がどのように社会問題に注目し、社会起業家として事業を起こすことができるのか、についての簡単明瞭な入門指導

b)、社会企業“手がたり”設立の経緯:企業内部の空間を利用して従業員のためにマッサージサービスを提供するというこの構想によって、視覚障害のある人々に新しい就職市場を拓くことになった。

c)、社会起業家に関する世界の潮流:ハーバード・ビジネス・スクールが開催する社会起業大会(Social Enterprise Conference)を例に、人材育成、資金調達、実践活動および社会起業家が大いに関心を持たれている現実的な背景について解説。

革新的な“手がたり”の事例は、学生達の極めて大きい興味と反響を引き起こした。この事業は社会の弱者層である盲ろう者に配慮するだけでなく、彼らの就業を支援し社会への帰属感を獲得させている。更に重要なのは、その事業自体がすでにみごとに成功し一定の社会的関心を集めていることで、これはきっと今後の発展の良い基礎となるだろう。参加した復旦大学の学生の中には、AIESECの大学生社会企業プランコンテストに参加した人も数名いたが、彼らがこれから実践しようとしているプロジェクトと田辺さんの“手がたり”の間に、一を見て他を類推するが如く、共通するものを感じ取ったようだった。

印象的だったのは、話を聞いた二人の学生が期せずして同時に思い至ったのが“上海では都市と農村の発展がアンバランスで、近郊地区の住民の収入はごくわずかだ”という社会問題だったことだ。彼らは南匯などの近郊地区で伝統手工芸製品の製作を通じて現地住民の収入源を補充したいと考えていたが、実際の運営過程では、多くの問題にぶつかっていた。田辺さんは、上海の大学生の社会企業に対する情熱や社会問題に対する関心の高さ、また彼らの素晴らしい行動力とアイディアに感動しておられ、講義終了後も彼らと引き続き交流し、若い彼らのソーシャル・イノベーションに対し、自分も何か力になりたいと語った。

田辺さんは、最も重要なのは社会起業家精神を培い、社会問題に対する関心とそれを解決する自分のアイディアを絶えず周りの人に伝えて共感を生み出すことだ、と考えている。彼は学生達に、社会企業に関心を持つようになったきっかけと最も改善したい社会問題は何か、と質問した。学生の大部分はCODE課程の履修者で、いつもお互いにこれらの問題を討論しているため、それぞれが熱弁をふるい、その雰囲気と精神はまたもや日本からの客人に深い感銘を与えたようだった。

ただ1つの小さい教室、しかし間もなくここから始まろうとしているすべてが、人を元気づけ鼓舞する。田辺さんは再三、この環境の中に身を置いて感じるのは、若い活力と情熱であり、これは日本の大学では非常に得がたく貴重なものだと強調した。もしかするとこれは現代中国の大学生に特有の希望に満ちた情熱であり活力なのだろうか。私達も共に期待し祝福したい。

11月6日、田辺さん一行は浦東の孫橋地区にある社会企業――愛の家(Home Sweet Home)を訪問した。愛の家と手がたりは、障がい者に就職機会を提供し、彼らの社会参加を支援するという点で似ている。愛の家は2005年、上海在住10年のマレーシア籍の女性によって設立された。ホームレス、特に身体障がい者に宿舎を与え、育成訓練、就職など一連のサービスを提供している。

愛の家のマネージャーである陳明華さんの紹介によれば、彼らがサービスを提供する身体障がい者はすべて地方出身者で、上海の戸籍を持つ身体障がい者ではない。それは、上海政府(上海市身体障がい者連合会)が当市の戸籍を持つ障がい者のためには、かなり良いサービスと保障を提供しているからだ。愛の家が注目するのは、上海政府の政策範囲に入らない外来の身体障がい者なのだ。つまり愛の家のサービス対象者の三大特徴は、地方出身者、ホームレス、身体障がい者である。

愛の家は、創立当初の1つの“家”から、今では発展して5つの“家”を持つに至った。いわゆる家とは孫橋鎮にある賃貸住宅で、住宅ごとに3-4人の身体障がい者が住んでいる。一軒ごとにそれぞれ名前があり、例えば希望の家、尊厳の家など、身体障がい者がすばらしい未来を持っていることを象徴している。すべての家の“借家人”は順番に管理人を担当する。毎月、管理人は家計簿の記帳と“家”の管理を行い、これによって彼らの自活能力を鍛える。

育成訓練と就職について、愛の家では彼らのために1年半~2年の育成訓練の期限を設定している。訓練内容は裁縫・裁断など工場で必要な手作業の技能の他、英語、コンピュータ、衛生常識などの基本技能である。これらの課程を教えるのはすべてボランティアであり、これらを身につけた身体障がい者はより速く社会に溶け込むことができる。今年は4人の学生が大学入試に成功した。田辺さんたちは愛の家の仕事と成果に敬服し、また非常に喜んでいたが、手がたりと愛の家は違う形式ながら、同じように身体障がい者の就職および社会参加を助けていると言えるだろう。

愛の家の身体障がい者は一定の労働技能を習得後、愛の家の工場に入って、精巧で美しい手芸品を作ることができる。私達は工場の中で製作中のマフラー、帽子などの工芸品を見た。身体障がい者はミシンの扱いも熟練しており、十分に裁縫の仕事をこなしていた。愛の家は上海市の最低賃金である毎月960元を労働者の給料として支払い、食事と宿泊の費用の約400元を差し引いているが、毎年勤続年数に従って給料も増額する。今年10月から、外国人などがたくさん住んでいる古北団地にある大手スーパーカルフールは愛の家のために無料の出店場所を提供し、彼らの製品販売に便宜を図っている。聞くところによると販売量は悪くなくて、製品はすこぶる古北地区の住民の歓迎を受けているようだ。

愛の家は静安区にも募集センターを持っており、土曜日ごとにスタッフが鉄道や地下鉄の駅、人民広場などに出かけてホームレスの身体障がい者を探す。彼らに話しかけ、入浴させ、食事をする。もしその人が愛の家に参加したいならば、契約書を交わすことになる。これまで多くの身体障がい者がその名を慕ってきたが、中には身体障害はないが就業するための技能を身につけ機会を与えて欲しいと願う失業者も来ることがある。

晩、田辺さん一行はGLIの第9回ネットワーカーサロンに参加した。今回サロンが行われた場所Archは、カフェ、バー、マルチメディア上映室の機能を集めた個性的な場所で、サロンの雰囲気をいっそう気楽で活発なものにした。今回のサロン参加者は15人ほどで、主に企業とメディアから来ていた。田辺さんははまず手がたりの設立、社会起業家の概念とハーバード大学社会起業大会の見聞を紹介した。参加者の多くが企業の職員だったため、彼らの質問もビジネスに関することが多く、“競争”というテーマをめぐる質問が出た。もし競争相手が現れたなら、どのように“手がたり”の生存と発展を維持するのか、“手がたり”の情況と同じ社会企業の競争相手や健常者によるマッサージサービスを提供する企業が“手がたり”より低い価格を打ち出してきた時、どのように対処するのか?

田辺さんは今すでに競争相手が現れており、健常者によるマッサージサービス会社のいくつかは、オフィスマッサージの分野に進出していると話したが、彼は全くこの問題を心配していなかった。なぜなら盲ろう者のマッサージには優位性があるからという。彼らは一般人に比べて更に注意力を集中することができ、その敏感な指先はマッサージの過程中に患者の体の状況を察することができる。盲ろう者のこの特技と優位性を発揮すれば、サービスの質で顧客を勝ち取ることができる。現在、手がたりの価格は健常者によるサービスの1.5倍だが、依然として企業に歓迎されている。

また、社会起業家は企業家とは異なり、ソーシャル・イノベーションにこそ関心を持っている。田辺さんは、盲ろう者のための社会企業が競争に参与するなら、それは盲ろう者の就職機会を増加したことになり、歓迎すべき競争であると語った。この外にも彼は絶えず新機軸を打ち出して、盲ろう者を支援したいと考えているという。企業からのネットワーカーたちは、この回答によって、社会起業家と企業家の違いを理解することができ、ずっと彼らを悩ませてきた社会起業家が経済的利益と社会的効果をどのように取捨選択するかという問題が解かれたと語った。

11月7日は、二人の上海訪問の最後の一日だった。この日の午後、二人はGLIスタッフとともに、浦東の非営利組織発展センターNPI(Non-Profit Incubator公益孵化器)主催の交流会に参加した。NPIスタッフ、“僕はあなたの目”という盲人団体の代表など、それぞれの機関の代表が集まり、お互いに実践経験と感想を分かち合った。
田辺さんは自分の創業の経験によって社会企業の発展段階別の特徴を総括し、特に創業してから発展段階の中間に至るまで、どのように‘死亡の谷’を越えるかという観点は、参加者の共鳴を獲得した。各団体からの代表は、田辺さんに多くの具体的な実務上の質問、たとえば“社会企業における合理的な利潤はどう設定するのか”、“社会企業の存在形式をどう選択するか”などを問いかけた。これに対し、田辺さんは根気良く、また詳しく自分の理解と見方を提供した。

交流会では、“僕はあなたの目”ボランティアの代表張さんは“手がたり”の経営パターンの啓発を深く受け、同じく視覚障がい者の就業支援に携わるものとして、”田辺さんと協力することを望むと語った。田辺さんの啓発の下、自分たちの構想を更に広げ、上海の1万余り視覚障がい者がそれぞれ自分の“オフィスマッサージ”式の業務を発展させたい、と。田辺さんは、彼らの情熱に感動し、自分も上海社会企業の成長や視覚障がい者のより良い社会参加に協力したいと語った。

交流会の後、田辺さんは日本の視覚障がい者から託された盲人テニスの器材(1本のラケットと専用ボール)を張さんに贈呈し、双方は言葉の壁を越えて、絶えずより良い交流と協力を発展させていこうと語り合った。

晩、田辺さん一行は大雨の中、8号橋で行われた‘ハンズ・オン・成都’主催のチャリティイベントに参加した。今回のイベントは四川の被災地に中古コンテナを輸送してそれをコミュニティセンターに改築するというアイディアのための資金調達イベントで、約200人の参加があった。

文責:楊怡雯、朱征 
翻訳:松江直子

(引用終わり)

【参考記事】
復旦大学にて、社会起業家についての講演
デザインは雇用を生む ~ 上海の社会起業家、Home Sweet Home 訪問
上海の社会起業家ネットワークで、講演
上海の実践者の方々との交流会にて、講演
中国と、食の安全 ~上海の市場で気づいたこと~
Hands on Shanghai ~四川大地震チャリティーオークション~

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