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里海:守れ 人が手を入れ環境を維持、取り組み始まる

(以下、引用です。)

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080811ddm016040012000c.html

 瀬戸内海や東京湾、伊勢湾など閉鎖性の高い海域の環境を守る方法として「里海」という考えが注目されている。「里山」に対応するもので、人間が適切に手を入れることで豊かな漁業生産性と生物の多様性を維持しようという試みだ。「21世紀環境立国戦略」で重点的に着手すべき施策とされ、環境省は今年度から里海創生支援に乗り出した。沿岸31府県市の首長で構成する瀬戸内海環境保全知事・市長会議も、「瀬戸内海を豊かな里海として再生する」ことを目指して瀬戸内海再生法の制定に動き出す。【榊原雅晴】

 「里海」は98年、瀬戸内海の海洋汚染を研究してきた柳哲雄・九州大応用力学研究所長(沿岸海洋学)が提唱した。定義は「人手が加わることにより、生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」。チッソやリンなどの栄養塩が森から川、海へと滑らかに循環することが必要とされる。

 豊かな漁業生産を誇った瀬戸内海は工場立地が進んだ60~70年代にさまざまな汚染が重なり、「〓死(ひんし)の海」と呼ばれた。ピーク時は年間300件近くの赤潮が発生。72年には兵庫県・播磨灘で養殖ハマチに大きな被害を与えた。

 73年に瀬戸内海環境保全臨時措置法(78年に恒久法化)が議員立法で成立。汚染物質の排出規制に取り組み、化学的酸素要求量(COD)などでみた水質自体は一定の改善があったが、漁獲量は最盛期から半減、赤潮も依然として年間100件程度発生し、豊かな海とはほど遠い。酸素が少なく、魚の生息に適さない「貧酸素水塊」も問題となっている。

 “海のゆりかご”と呼ばれ、稚魚の生育に欠かせない藻場や干潟が埋め立てで失われたこと、ダム建設などで森から川、海へという自然な物質循環が阻害されたこと、コンクリート材料として大量の海砂が採取されたこと--などが原因と指摘されている。

 こうした反省から、昨年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」は「多様な魚介類等が生息し、人々がその恵沢を将来にわたり享受できる自然の恵み豊かな豊饒(ほうじょう)の『里海』の創生を図る」とした。環境省の3カ年の支援事業は、市民参加型の生物・水質調査を実施するほか、植林、藻場・干潟の再生活動などが盛んなモデル海域を選定し、里海づくりのマニュアルを作成する。日本型の沿岸海域保全方法を発信することにより、「アジアの環境保全にも貢献したい」としている。

 ◆専門家に聞く

 「里海」の提唱者である柳研究所長と、琵琶湖を「里湖(さとうみ)」ととらえる嘉田由紀子・滋賀県知事に「人と海(湖)とのかかわり」を聞いた。2人は80年代、共に琵琶湖調査に携わった経験がある。

 ◇生活者の視点で活動--嘉田由紀子・滋賀県知事

 私と仲間が80年代に琵琶湖研究を始めたころ、下水道整備や物理化学的な方法で水をきれいにする近代技術主義と、ヨシ帯や希少種を守ろうという自然環境保全主義とが環境政策で対立していた。しかし、地元での調査を続け「第三の道がある」と感じた。それが、生活者の視点で環境とのかかわりを見る生活環境主義です。

 湖辺の農山漁村の人々の考えは自然保護論ではない。例えば、ヨシ帯は自然のまま放置するのでなく、刈り取って利用し、手を入れて維持されてきた。川もアユやビワマスが産卵しやすいよう、川底を耕していた。シジミかきは湖底を毎日掃除しているようなもので、結果的に酸素を供給している。自然に手を加えながら生産力を上げる仕組みがあった。そういう川を「里川(さとかわ)」「里中川(さとなかがわ)」と呼んでいた。最近は「里湖」という言葉も使われます。

 里海的役割を果たしているのは琵琶湖では湖岸の内湖(琵琶湖から派生した潟湖)。水深が浅く、魚の産卵場に最適です。かつてはそこで水草や魚を取って肥料にし、チッソやリン、炭素がうまく使い回しされていた。戦前37カ所2900ヘクタールあった内湖が、今は23カ所425ヘクタール。瀬戸内海が開発で干潟や藻場が無くなったように、湖岸が干拓され、あるいは埋め立てられた。

 平成になって反省が生まれ、いったん干拓した田んぼを内湖に戻す動きもある。最初の例が湖北の早崎内湖。今、だいぶ魚たちが戻ってきています。田んぼでフナを育てる動きも始まりました。

 里湖や里川を復活させるため「どんな生き物がいるんだろう」と関心を持ち、水辺遊びをしてほしい。田んぼや川に魚がいれば、今の子どもだって夢中で追いかけるはずです。

 ◇干潟や藻場の再生を--柳哲雄・九大応用力学研究所長

 ずっと瀬戸内海を研究し、「人間がいるから環境が悪くなった」と聞かされてきたが、本当だろうか。里山は人間が手を加え続けるからこそ里山たりうるし、生産性も上がる。人間がいることで環境を良くすることは可能ではないか。それを海でも考える必要があるのではないかと思った。

 直感で「里海」という言葉を使ったら反響があって、「定義がよく分からない」と言われ、しかたなく勉強しました。赤潮とか貧酸素水塊の研究を続けてきたので、「太く長く滑らかな物質循環こそが重要だ」とは分かっていた。

 今、問題なのは陸域から栄養塩が一気に海に流れ、それによって増殖した植物プランクトンの大部分が枯死して沈み、海底が貧酸素に陥ることです。昔は干潟や藻場があって、栄養の流れ方が多様だった。生物生産を増やし、多様性を増やすには浅場を増やさなければならない。

 もう一つは河川流量の減少。川から海への流入が引き起こす河口循環流は海水を鉛直方向にかき回す効果が大きい。それが減り、スムーズな物質循環を阻害している。ダムなどが水を陸にため込んでいるからです。

 大学紛争後に瀬戸内の汚染調査をやっていた時、漁師から「海の中に川のような流れがある」と聞いた。その流れが汚染物質を運んでいたのだが、学者や役所は否定する。「では証明してやろう」と、水理模型で突き止めた。自分の学問が人の役に立つと分かり、研究を続ける気持ちが持てた。里海もその延長と言えます。

 そこで暮らす人がいなければ環境は守れない。瀬戸内海の漁村は疲弊し、漁師の人口は0・1%。それで海を守れるわけがない。科学者と漁師、市民が共に動かなければなりません。

毎日新聞 2008年8月11日 東京朝刊

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