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社会的企業家? 社会起業家? ~どちらの表記が適切か~

読者の方から「社会的企業家、社会起業家、と二つの表記があるが、どちらがいいのでしょうか?」とのお問い合わせをいただきました。

「企業」と「起業」。 現在、言葉の並存状態があると思います。 

あまり固定して決めない方が良いというご意見も伺います。 ただ、言葉は大切にしたいものです。

ご一緒に、考えてみましょう。

まず、「社会的企業家」という表記は、お役所や大学等の資料では、多く見られます。

一方、「社会起業家」という表記は、実践者の間で一般的です。

いずれも、英語の Social Entrepreneur を訳そうとして、二つの和訳が出てきています。

同一の英単語から生まれた和訳ですので、双方とも、指す内容は同じです。 ソーシャル・イノベーション(社会単位の新しい工夫)を起こす人です。 自ら創業しても、組織の中にいながらでも、構いません。 行為であり、法人格も問いません。

さて、「社会的企業家」と「社会起業家」が、どちらが、より適切な表記か、考えてみました。

筆者は、「社会起業家」が、適切な表記と考えます。

以下に、理由を述べます。

まず、社会的企業家は、学問的には、正確を期した翻訳といわれています。 Social Entrepreneur という二つの単語で、まず、Social は形容詞ですから、「社会的」。

しかし、「的」は、何かあいまいさを、読み手に伝えます。「的」を外した方が簡潔と思います。

そして、Entrepreneur は、「企業家」という和訳が、わが国で広く使用されてきました。ご存知のように、経済学者のシュンペーターは、イノベーション(新しい工夫)を、企業家 (Entrepreneur) が生み出す、と説きました。

確かに、「社会起業家の父」といわれる、ビル・ドレイトンの話を直に筆者は伺ってきましたが、「世界史において Entrepreneur は生産力を向上し、構造変革を担ってきた」と説いています。

一方、東京工業大学大学院NPMコースの渡辺孝特任教授は「海外では、Entrepreneur と Innovator は特に区別されずに論文等で使用されてきていて、そして、Innovator は改革者という意味合いがある」と指摘しています。

Entrepreneur と Innovator は、確かにネイティブの間で、あまり区別されていません。

そして、重要なことは、「起業」は、非営利事業(ノンプロフィット)の起業も含まれるということです。

一方、「企業」では、「民間企業」「一般企業」との日本語もあるように、営利企業をさす言葉です。 非営利団体のNPO・NGOを含むには、あいにく無理があります。誤解を生みかねないと筆者は考えます。

確かに、「起業」で起こすだけでなく、事業の持続性を工夫して企てる「企業」が良いとの指摘を伺います。

しかし、上記のように、「企業」の言葉の範囲に、限界があります。

そして、松下幸之助や本田宗一郎、井深大らは、企業が大きくなってからも「起業家」と呼ばれ続けてきました。

「社会企業家」は、企業にお勤めをしながらの方には良いのですが、NPOや個人事業主、ベンチャー創業者には、上記の理由から、適切ではない表記になります。 

でも、企業内でソーシャル・イノベーションを始める力の重要性も考えると、社内「起業」であり、挑戦する担い手を伝わる表記をした方が妥当と筆者は思います。

まとめますと、「社会起業家」は、ソーシャル・イノベーションを起こす人であり、事業の創業者も、組織内の人にも使用できます。そして、起業には、非営利事業も含まれます。「社会的企業家」よりも、より適切な和訳です。

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